東日本大震災を通して感じたこと
         
瀬野整形外科診療所 院長 瀬野幸治


はじめに
連絡手段について
物を送るという事
ボランティア
生活不活発病

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はじめに

 昨年3月11日の震災から1年以上が経ちました。小生は仙台市医師会で災害担当理事を務めているため、貴重な経験をさせていただきました。その現場で見聞きし、感じたことを少し述べさせていただきます。

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連絡手段について

 被災直後は携帯電話、固定電話が使用できず、情報の収集・発信に困りました。無線が有効でしたが、全国民が持てるようになるとは思えません。公衆電話は停電時でも使えますし、災害時優先電話指定になっているのでかかりやすいようです。最近は、携帯やメールに多くの人たちが頼りきっているので、これらの機器が使えなくなると何もしなくなる方が多いようですが、災害用伝言ダイヤルは有効です。このシステムを皆が理解していれば、災害直後の輻輳(通信が一時的に集中すること)に対処できます。それと、災害直後に被災地外から被災地に安否確認の電話をすることは避けた方が良いでしょう。被災直後に被災地にいる人々は緊急事態に対処することで精いっぱいですし、電話がさらに繋がりにくくなるだけです。安否確認だけなら後日電話するか、災害用伝言ダイヤルを利用しましょう。被災地の中では電話やメールが使えないときに、どうしても伝える必要があるときは直接行くことが一番確実です。伝える内容はメモに書いて渡すと、相手にも伝わりやすくなります。


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物を送るという事

 災害の後には一時的にいろいろなものが急に必要になります。大災害の場合は被災地だけで調達することは困難です。物がない被災地に対し、多くの方々にいろいろな品を送っていただいたことには、とても感謝しております。しかしその一方で、被災地に送られては困るものも多数送られてきました。私個人としての話だけではなく、周囲の方々から見聞きした話です。送られてきたものは仕分けしなければなりませんが、使えないものや不要なものの整理は精神的にも肉体的にもきついものです。まず、災害後しばらくは宅配業者が自宅まで荷物を届けることができないために、営業所に本人が取りに行かなければなりません。今回の震災後はガソリンが枯渇し、それでも頑張って営業所まで荷物を取りに行くと、実際使えないものだらけだったという事はよく聞こえてきました。また、その不要なものは被災地の方が被災地で処分しなければならず、生きていくことが精いっぱいの中で処分に対するエネルギーもばかになりません。行政も扱いに困るものをたくさん抱えてしまいます。送る方が、送ることだけに満足するのではなく、被災地に喜ばれるようなものを送るのがよいでしょう。○○を送ってくださいとリクエストがあったものが一番でしょう。中古でもお願いしますと書かれている場合以外は、新品の方が喜ばれるようです。何を送ったらいいのか分からない場合は送ってほしいものが分かるまで送らない方が良いでしょう。送ることが目的ではなく、被災者の支援が目的なのですから。ちなみに医師会に送られてきた支援物資の場合、物品リストがついていると仕分けが楽でした。

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ボランティア

 多くのボランティアの方々が被災地に来てくださいました。被災者だけではできなかったりあきらめてしまったりしたことでも、ボランティアの方々のおかげで出来たことが数多くありました。支援を受けた多くの方が愛と感謝を感じたことでしょう。ただ、日本人は受け入れる側も提供する側も災害ボランティアにはまだ不慣れです。被災直後には専門家以外はボランティア活動が困難なので、ある程度落ち着いてから一般の方のボランティア活動が始まります。最近はネットで呼びかけをしているところが多いので、そのようなシステムを利用した方が参加しやすいでしょう。災害ボランティアの鉄則は、"完全自己完結"です。水や食料はもちろん、簡易トイレや、またテントと寝袋を持っていくということもあります。活動中や活動後も自分を守る(肉体的にも精神的にも)必要があります。いろいろと問題もありました。ボランティア活動に来て、地域のボランティアセンターではさばききれなくなったときに怒りだす方(個人でボランティアにいらして、そのような事態が生じるようです)、避難所で医療類似行為(マッサージや整体など)を初回だけ無料で行い、避難所での自分の場所を確保して、次回から有料にする方々もいました。ボランティアの入り口で人物評価をして、受け入れ認定をするわけにはいきません。好ましくないボランティアが出てくると、全体の受け入れ制限が出てくることもあります。このような例はごく少数ですが、トラブルの対処も、被災地ではエネルギーのいる仕事です。できれば無い方が好ましいのです。

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生活不活発病

 文字通り、生活が不活発になることにより、活動能力が低下する病気です。災害時にはよく見られます。避難所や、仮設、みなし仮設などにいて動かないでいると、心身の機能が低下して動けなくなります。避難所などではボランティアの方々もやる気満々で、炊き出し、掃除など何でもやってくれますが、動ける人が動かないでいるとしだいに動けなくなるのです。被災者の方々も自分でできることはなるべく自分でするようにしましょう。ボランティアの方々も、自分が働くことだけが求められているわけではありません。避難所などで被災者の方が自分で率先して仕事をしているなら、任せてあげてください。もちろん歩行が不安定な場合や、見ていてつらそうでしたら、声をかけて手伝って下されば幸いです。生活を活発化させるには、動くことも必要ですが、役割を持つことも重要です。自分が社会の資源になっているという自覚があると、心身が前向きになっていくものです。動かないでいると動けなくなると書きましたが、全ての方が動いた方が良いのではありません。心臓や肺に病気をお持ちの方は積極的に動くことはできませんし、関節に炎症がおきている方も、その関節を無理に動かすと症状が悪化します。腰からくる神経痛のために続けて長く歩けない方や立っていられない方も、無理して歩いたところで根性がつくだけでちっとも治りません。痛くない範囲で動かすこと、続けて行わず、小分けにすることがポイントです。“お大事に”と、医療機関から帰るときに言われることが多いのではないでしょうか。道具を大事に使うという事は、無理な使い方をせずに適切に使用し、手入れをすることです。人間の身体も同じです。使わなかったり、適切な使い方をしなかったり、手入れをしなければ壊れてしまいます。あなたの身体を大事に使いましょう。