整形外科医の視点
低医療費政策による医療の質の低下
本田整形外科クリニック  本田忠 
 現在、小泉内閣で医療の効率化と称して、急性期医療施設の削減、フリーアクセスの制限などが図られております。このような医療制度がどうなるかは、イギリスの制度が参考になります。カナダと同じような制度になっています。

 イギリスの医療制度は低医療費政策で、門番医師をおいてフリーアクセスを制限して、専門家の医師がみるまで時間がかかります。無駄を省くと称して、急性期病院の数も減らしました。地域で検査機器も減らして、診断まで時間がかかりすぎます。そのため、待ち時間が長くなりすぎました。医療が機能しなくなってきています。医療の質が低下してしまったのです。
 実際に、当方の一般公開している健康相談掲示板へは、イギリスに滞在している方から、次のような相談がありました。イギリスの医療制度の問題から、右の親指をけがしたため、親指を完全に持ち上げられないのに、けがしてから二ヵ月半たっても何の処置がなされず、整形外科に診察をしてもらうまでにもまだ時間がかかるようで困っているというものです。


当方の健康相談掲示板への相談事例。

右の親指をけがして、親指を完全に持ち上げられません。現在イギリスに滞在していて、こちらの制度の問題で、けがしてから二ヵ月半、たっても何の処置がなされず、整形外科に診察をしてもらうまでにもまだ時間がかかるようです。日本に帰国して診察することも考えております。

回答
腱断裂なら3週間以内に行えば単純に縫えることが多い。それ以上になると腱が委縮して腱移植が必要になることもあります。



 このようなイギリスと比べると、日本の医療制度には、フリーアクセスが制限されず、ご自分の信頼できると思われる医療施設に自由に通えて、気楽に開業医でも整形外科などの専門医にかかれて、手術も行うことが出来る簡単な医療施設もある、小回りが効くというよさがあります。

参考資料

●イギリスの医療の非効率

 家庭医はレントゲンもなく待ち時間は極端に長い。単一施設では診断治療ともほとんど機能しない。

医学書院/週刊医学界新聞 第2273号 1998年1月19日
レポート 英国のGeneral Practitioner 高橋
http://www.igaku-shoin.co.jp/nwsppr/n1998dir/n2273dir/n2273_16.htm
 National Health Service(NHS)制度のもと診療報酬は完全なマルメである。NHSは税金で運営されているからこの制度のもとでは患者さんの負担はない。しかし,入院が極端に制限され,緊急でない入院は何か月も待たされることがザラであるという。そのため,国民の10人に1人が民間保険に加入しており,「NHSの患者は金を払わないですむために待つ。私費患者は待たないですむために金を払う」と言われるほどである。
 診療所の診断用機器の装備はきわめて少ない。レントゲン,エコーはもとより心電計もない。諸検査はすべて外注である。それだけに,問診,身体所見の持つウエイトが大きくなってくる。医者の頭の中のソフトウェアが重要になる。

かかりつけ医通信第48号
http://backno.mag2.com/reader/BackBody?id=200302050910000000074854000
 イギリスの医療
 しかし医療予算不足から医師・看護婦の不足→医師一人当たりの担当患者増大→医師・看護婦の疲弊による医療ミス、と悪循環を招いていると言われています。
 GPは登録された人数分の支払いを受け,実際に治療した数と支払とは関係ありません。これが,医療費の「まるめ」「包括化」の究極の姿です。高度な医療,高額な機械の導入をすればするほどGPは負担に苦しむことになり,医療は萎縮していきます。これもイギリスの医療制度の問題点です。

医療社会学者・栗岡幹英さん(静岡大学教授)
『イギリスの医療改革と患者の参加』
http://www.cybermed.co.jp/hirakareta/hirakareta.htm
 イギリスの医療の医師不足と非効率

医学書院/週刊医学界新聞 第2234号 1997年3月31日
連載 イギリスの医療はいま 第12回
http://www.igaku-shoin.co.jp/nwsppr/n1997dir/n2234dir/n2234_04.htm
 待ち時間が長い


●アメリカの医療の非効率

 専門分化が行き過ぎて診療所の機能は落ちている。レントゲンもとれない。家庭医の収入は低く、なり手がいなくなってきている。患者も出来るだけ専門医にかかりたいという希望が多い。これは患者心理としては当然うなずける。

アメリカの医療と保険
http://www.mcfh.net/medicalusa.htm
 日本では事後審査で医療費の支払い額が確定し、非支払い分は医療機関の損失になるために、必要な検査や治療が行われないことはないが、アメリカではときとして、医師が必要と感じても、保険からの支払いが認められない場合には、その必要な医療を行うことができないという事態が発生しうる。

アメリカの医療
http://www.takahama.net/medic/m4.htm
 アメリカ型の医療を受けに行って驚くのは診察する医師の周りに検査機器が少ない事でしょう。

アメリカの医療の医師の分業の功罪
http://www.tseikei.com/leg.htm
 たかが足の変形の診断から治療でえらい時間がかかる

米国の医療社会を再検討する!アメリカの医師の年収など
http://jpc.vis.ne.jp/BUNKEN/MEDICAL/HMO/HMO.html
 アメリカにおいては家庭医は地位は低い。年収も低い。

今のアメリカの医療関係者の年収は?
http://www.kurashiki-med.or.jp/kojima/yamana989.html
 HMOの存在下でどんどん低くなっている。

戻る