レセプトから見た医療費の使われ方2001/6/2

      瀬戸病院  瀬戸信夫


はじめに

20%の患者さんに75%の医療費が使われているというお話しです。1 ヶ月のレセプト(診療報酬明細書)請求金額を分析し「医療費の実状ページ (吉岡春紀)http://www.urban.ne.jp/home/haruki3/resept2.html」を資料と しています。私自身データを見てちょっとびっくりしたものですから、復習の 意味で整理してみました。詳しくは上記HPをぜひご覧下さい。


 結論は、大多数の患者さん(ほとんどが外来診療)が消費する医療費は驚くほど低いもので、またいわゆる「高額医療」が医療費を消費していると考えていましたが、そうとも言えないという結果でした。
医療費上位から1%レベルの診療費(1ヶ月)は40万円、5%は5-6万円、10% は3-4万円、20%は2万5千円でした。また外来の1件あたりの平均診療費(1ヶ 月)は14870円、入院の1件あたりの平均診療費は326,670円でした。
 生命の値段(本田忠)http://www.jcoa.gr.jp/content/seimei.htmlもご参照下さい。


1、上位20%で75%の医療費を使っている
逆に言えば100人の患者さんのうち80 人の「軽医療グループ」にかかる費用は、医療費総額の25%でしかないという ことです。月2万5千円以下とは、外来でしかも特殊な検査や治療、投薬を受け ていない人がほとんどでしょう。開業医の外来患者さんの大多数が「軽医療グ ループ」と考えられますが、このグループに医療費の負担を増やして受診を抑 制しても25%の部分を少し削るだけで、医療費全体から見るとあまり削減効果 がありません。というよりも医者にかかりにくくして病気の早期発見を遅らせ ることによって、医療費増蒿に働く可能性が強いと言え、医療経済的にも「軽 医療」は抑制しない方が良いと考えられます。外来の受診抑制策は間違った政 策と言えます。
 ちなみに、入院医療費と外来医療費をおおざっぱに見ますとほぼ同額、また 外来医療費の内訳を見ますと病院と診療所でほぼ同額の医療費が使われていま す。
2、 上位5%で55%の医療費を使っている。

上位5%とは月の医療費は5-6万円。こ のレベルですと、短期間の入院や、外来でも(特に病院の)ちょっとした検査 や手術をすれば時にあります。これが上位5%なのです。
3、 上位1%の患者さんに25%の医療費を使っている
 上位1%の1ヶ月の診療費は、おおよそ月40万円です。平均入院医療費より少し 高い金額ですね。医療費の上位1%というともっと高い金額かと思っていまし た。
 上位1%はほとんどが入院患者のレセプトといえるでしょうが、上位1%レベ ルでもまだ「高額医療」とは言えませんね。
4、上位0,1%のレセプトに5%の医療費。「高額医療」と言える月100万円を超えるレセプトは、総レセプト枚数の0.1%でした。この月100万円を超すグループの使用している医療費は全体の約5.5%となります。このグループは急性期医療、高度先進医療、延命医療などで、高齢化や医療の進歩に伴い、今後ふくらんでくる 部分ではありますが、思ったほど大きい比率ではないですね。
 無駄な延命医療をのぞき、急性期医療や高度医療に、今以上に医療費をつぎ込むことは、 意味のあることと考えます。


終わりに
いろいろな理由で診療所でなく病院の外来にかかる患者さんが多いの ですが、厚生省はかかりつけ医を持つことを勧めています。とかく高額になり がちな病院外来受診を減らし、かかりつけ医からの紹介で必要な検査や入院治 療を受けるという方向性は正しいと思います。ただし今以上に病院と診療所の 連携を深める必要があります。また、主に開業医が行っている「低額医療」の 抑制は先にも書きましたように間違った政策と考えます。入院費用を削減する ために、厚生省は病床半減策を考えています。病床は急性期病床だけにし、慢 性期病床は医療でなく介護保険に移行させようと言うものです。しかし急性期 病床には入院期間の縛りがありますので、患者さんの「追い出し」は必然的で す。この受け皿なしに制度変革することは、大きな混乱をもたらします。また、 諸外国に比べて非常に安い医療費によって病院経営が困難となっており、これ が医療事故多発の一つの要因となっています。医療費の無駄を削減することには賛成ですが、必要な医療費を抑えすぎることは医療の質を悪化させます。