交通事故と健康保険

平成2000年8月17日及び9月7日の朝日新聞「くらし欄」「交通事故でも健康保険で治療が受けられる」を読んで


○はじめに

平成2000年8月17日の朝日新聞「くらし欄」に交通事故でも健康保険で治療が受けられるとの 記事がありました。この記事は実地医療にたずさわる者としてきわめて問題の ある記事で、臨床整形外科医会はじめ各方面からの抗議よるものか、平成2000年9月7日の 訂正記事を出すこととなった。この記事及び同面にかかれたもうひとつの 記事を元に朝日新聞に対して私の意見を示したい。

 

日本臨床整形外科医会の交通事故における健保使用;朝日新聞への正式抗議文


○健康保険と交通事故について

まず、健康保険について簡単におさらいしましょう。 健康保険は加入者がお金を出し合い、加入者自らが通常の病気やけがをした時にそれを 助けあうためにある制度です。ですから対象外の疾病があります。 例えば業務上のものであれば、それは労災保険を使ってください。美容整形は全部自己 負担ですよ。そういった決まりがあります。 その一つに第3者行為というのがあります。第3者行為というのは、病気やけがをした 本人には責任がなく、他の誰かに主たる原因がある場合をさします。代表的なのが交通 事故です。ですから、基本的には交通事故は健康保険を使えないのです。 では全部が使えないかというとそういう訳でもありません。 交通事故の加害者が、酔っ払い運転や無免許運転だと、自動車保険の方が免責と言っ て、お金を出さない決まりになっています。それではけがをした人は困ります。ですか らそういった人を救済するために、暫定的に健康保険を使ってもいい、となっていま す。健康保険の方では後で加害者に医療費を請求するしくみになっています。 また、自損事故は自分自身に責任があるのですから、通常のけがということにになり健 康保険を使います。もう一つ、事故の被害者になったけれど、そもそもの事故の原因が 被害者にある場合もあります。この場合責任の程度に応じて、過失割合というのが生じ ます。被害者の過失割合が高いと、自動車保険はあまりお金を出しませんので、被害者は自分の保険を使って医療を受けるということもありえます。自損事故に準じているのですね。


○自動車保険について

自動車保険に自賠責保険と任意保険があることはご存知かと思います。 自賠責は被害者救済を目的とした強制保険で営利を目的としません。保険を運営するに あたっては損もせず、儲ける事もしません。ただ、治療費などの総額が120万円を上限 としていますので、被害者が重症のケースでは不足します。その場合は任意保険で補う 事になります。こちらは損保会社がやっております。 交通事故の医療費は自賠責、任意保険の順で使っていくのが原則となっています。 さて、ここでやっかいなのが、先ほど健康保険のところで述べた交通事故で健康保険を 使えるケースです。自損事故などのように本人の責任が明らかな場合は最初から健康保 険でいいのですが、過失割合が関係してくると健康保険なのか自動車保険なのかがなかなか決まりません。 損保会社は営利を目的としていますので任意保険から出すお金は少なくしたいわけで す。そのため、治療費は最初から健康保険を使い自賠責は慰謝料などに充てる。結果的 に任意保険をあまり使わずに済むため、被害者に事故当初からこの方法をすすめること があります。ただ、国民全体の財産である健康保険によって損保会社が逆に利益を得る 事は、保険の趣旨からは逸脱しているのではないでしょうか。


○新潟の例について

先ほど述べたように、被害者の過失割合が高い場合、自分の健康保険が使える場合があります。ただ、医療機関としては早くそれが確定してくれなければ宙ぶらりんの状態に なります。もう自動車保険は使いませんと示談が成立していればいいのですが、その前 の段階だとどの保険を使えばいいのかわからないからです。 極端なことを言えば、どんな交通事故だって過失割合が生じる可能性があります。そう なると医療機関ではそれが確定するまで、医療費の請求を保留するか、いったん全部健 康保険に請求するしかない事になります。前者であれば医療機関の経営を圧迫するし、 後者であれば健康保険の本来の目的に反します。 新潟の例では自賠責保険は使えたようです。すると示談はまだ成立してなく、過失割合 も決まっていなかったのではないでしょうか。だとすると健康保険ではなく自賠責を使 うのは何ら問題ではありません。それを医療機関の無理解だとか、悪徳商法呼ばわりす るのはいかがなものでしょうか。


○将来問題になりそうなこと

もし仮に、朝日新聞の記事を見て、多くの読者が交通事故になったら自賠責を使うよ り、健康保険を使った方が有利だと判断するようになればどうなるのでしょうか。なに より一番困るのは健康保険でしょう。ただでさえ財政難なのですから。また、第3者に請求して支払ってもらうまでの仕事量も膨大になることが予想されます。 ちなみに昨年度私の地元の国民健康保険では、第3者に請求した金額は国保予算の約 0.4% でした。そのうち0.1%強が回収できなかったとのこと。保険者や年度が違うし全部が 交通事故ではないでしょうからそのまま当てはめるのはいささか乱暴ですが、仮に日本 の医療費30兆円の0.1%とすれば、今でもお金だけで年間300億円が健康保険の負担にな っている計算です。これがさらに膨らむのは確実でしょう。 一番得するのは、もちろん損害保険会社と自賠責です。自賠責は今でも掛け金の80%程 度の支出となっていて、新聞記事のように保険料が上がる心配はあまりありません。健康保険を使う人が増えると支出はもっと減ることが考えられます。

もっとも、自己負担分と補償費を自賠責で賄い、残りは全部健康保険でかかったとする と、任意保険はほとんどいらなくなりますよね。せいぜい対人の死亡保険くらいです。 決して絵空事ではありません。現実に大手のタクシー会社では会社ぐるみで任意保険に 入っていないところもあります。事故を起こした場合は、会社の事故担当の専門家が、 被害者と直接交渉するものと思われます。こういったケースで被害者が、交渉慣れした 専門家を相手にして、十分な医療や補償を得ることが出来るのでしょうか。さらに健康 保険との関係がどうなっているのか。結果的に保険者の負担が増えることになりはしな いか心配です。 さらに今後問題になりそうなのが、事故率が高くリスク細分化型保険のメリットからも れた層です。今は外資系損保だけですが、今後これが広まっていくれば、任意保険に入れない、あるいは入れても保険料が高くなる人達が出てきます。中には任意保険に入ら ないまま運転を続ける人もいるでしょう。仮に事故を起こしても、支払能力がなければ 結局健康保険で医療費を負担するしかなくなります。 このようなことが常態化しますと健康保険は立ち行かなくなりますし、任意保険も空洞 化しかねません。朝日新聞の記事によって、健康保険の財務がさらに悪化することや、 自動車保険制度への信頼が揺らぎ、結果的に被害者が泣き寝入りせざるを得なくなるよ う事態を憂慮するものです。

私たち医師は損保会社と対立するものではなく、協調してやっていきたいと思っていま す。被害者救済を第一に考え、また健康保険制度にのっとり社会的責任を果たしていく ことが、医師や損保会社の務めではないでしょうか。そのためにも医師会などと話し合 って決めた自賠責、任意優先の原則をこれからも守り、維持していって欲しいと願っています。


○医療機関の不正

さて、くらし欄の記事の問題点は実はメインの記事だけにあるのではないと私は考えま す。むしろ問題なのは「言いたい」のコーナーの最後の投稿であります。投稿したのは 大阪に住む匿名の36歳の主婦です。内容を簡単に紹介します。

以下は朝日新聞より引用

自分の複数の医療事務の経験から、不正請求は「レセプト」「健康保険番号」「患者 名」があれば簡単にいつでもできる。対象は生活保護や老人保険の患者さんが多い。友人や親せきに被保険者番号を借りて、不正請求を繰り返す開業医も少なくない。親しい 医師は1日の外来患者は10人だが月収は400万円もある。

以上引用終了

本人が自らそれに関与したかどうかは文面からははっきりしませんが、大変重大な発言です。なぜなら不正請求は詐欺であり、れっきとした犯罪行為だからです。彼女は複数 の犯罪の現場にいて、それを新聞紙上で告発しているのです。 詐欺罪は被害届がなくとも成立します。詐欺未遂も同様です。つまり不正なレセプトを 支払基金などに出した段階で犯罪になるのです。新聞記事を読んでそこに犯罪がありそ うだということになれば、警察は捜査を開始すべきであります。 また医師会としてもこれを看過すべきではないと考えます。医師会は決して仲間内の犯 罪行為をかばい合う組織ではありません。友人や親せきの被保険者番号を借りて不正請 求するなどは、言語道断です。悪い事は悪い事として、厳正に対処しなければなりませ ん。

投稿の主は匿名でした。ということは投稿記事に関しては朝日新聞社が全責任を負うものだと私は理解しています。この方法で不正請求が可能なものなのかどうか、当然のことながら裏づけは取っていること思います。まさか真偽の定かでない投稿をそのまま掲載したなんてことはないですよね。 ちなみに私の地元では、生活保護の人は医療機関にかかる時は必ず役所の福祉課にいっ て医療券を貰ってきます。レセプトは社会保険に請求します。不正請求は難しいと思う のですが、彼女の経験したところはそうではないのですね。 また、不正請求を繰り返す開業医がどれくらいいるのか。やめた医療事務の職員が告発する危険性を考慮すると、私はあまり割のよい犯罪だとは思わないのですが、少なくない開業医がそれに手を染めていると告発しているのですから調査済みかと思います。 一日の外来患者が10人で、それで月収400万というのも私から見ればにわかには信 じられない数字ですが、こうして記事になるからには可能なのでしょう。個人的にはど うやれば出来るのか、こっそりと教えて欲しい気がしますが。


【9/7朝日新聞くらし記事全文】

○交通事故の保険適用

○健保に届け出必要

○交通事故に遭ってけがをした場合でも、普通のけがや病気と同じように健康保険 が使えることを紹介した八月十七日付の「くらし」記事に、さまざまな意見をいただ いた。その主な内容は、「交通事故で健康保険が使えるのは、健保組合など保険者が 事前に承諾した場合だけだ」という医療関係者からの指摘だった。健保組合には、承 諾する権限はないが、確かに「届け出」は必要だ。この届け出について調べていく と、現場の取り扱いが混乱しているのがよくわかる。健保を使った方が被害者にとっ て有利な場合があるから、切実な問題だ。(佐藤純)

○診療後の提出でも可能

○八月の記事では、交通事故でけがをした元会社員が、健保を使って診療を受けよ うとしたところ、医師に断られた体験談や、「交通事故によるけがも保険給付の対象 となる」という厚生省の通知を紹介した。

○健保を使う保険診療の場合、治療費には診療報酬という公定価格が適用される。 つまり、医療費の値段が決まっているので、健保を使わない自由診療に比べて医療費 を抑えられる。得に、被害者の過失割合が高く、治療費も高くなる場合は、被害者も かなりの負担を強いられるので、健保を使えば被害者の負担軽減にもつながる。記事 の中でこんなことを説明した。

○「重要な一点が欠けています。それは健保適用の前提には、(保険者への)届け 出があることです」

○「被保険者は保険者に届け出をし、承認を受けなければなりません」

○読者からの指摘が相次いだ。

○八月の記事では触れなかったが、「届け出」の手続きは必要だ。他人の車にはね られるなどしてけがをし、健保を使って診療を受ける場合、「第三者行為による傷病 届」といった書類を健保組合や社会保険事務所、国民健康保険を運営する市町村、共 済組合など、それぞれが加入している保険者にださなければいけない。事故の報告書 や診断書も一緒に提出する。

○加害者に治療費の支払を求める権利を、被害者に代わって保険者が得るための手 続きだ。ただし、健康保険法施行規則などによると、必ずしも診療の前に届け出なく てもよく、診療を受けてからできるだけ早く提出すればいい。

○電子メールをくれたある整形外科の開業医は、届け出が確認できるまで、患者へ の医療費請求を見合わせている。保険診療か自由診療か決まらないので、医療費の計 算ができないからだ。本来その日に入るはずのお金がはいらないのは医療機関にとっ て不都合だが、不慮の事故にあった被害者の立場に配慮しているという。

○厚生省「保険者は拒めず」

○開業医「認めない組合も」

○厚生省などに確かめると、保険者は交通事故に遭った加入者が「第三者行為」に よるけがなどの届け出書類を提出しようとした場合、特に不備がなければ、原則とし て受理することを拒めない。つまり、保険診療を受けるかどうかは、あくまで加入者 が決めることだ。

○しかし、読者からの投稿を読むと、現実はやや異なるようだ。

○岡山県の整形外科診療所に勤める事務員は、被害者本人の負担が大きくなりそう な時には、「健保が使えますよ」とアドバイスしている。

○最近、交通事故に遭った電機メーカーの社員に助言した。しかし、この社員が会 社の健保組合に相談した結果、「やはり、健保は使いません」と伝えてきた。以前も このメーカーの社員から、「うちの健保組合は交通事故の場合は使えない」と言われ たという。

○「健保組合が、交通事故の場合は健保が使えないと誤解しているんでしょうか」 と診療所の事務員はいう。 ○大阪府にあるこの健保組合に電話で取材してみた。

○「事故の場合健保は使えないと言われた社員がいるそうなんですが」

○しかし、「うちは届け出があったら断りません」という。ただ、届け出には診断 書や事故報告書などが必要だと伝えると面倒臭がって健保を使わない人もいるとい う。

○健保を使うことを、保険者に拒否されてスムースにいかないという訴えも届いた。

○新潟県の整形外科の開業医から、「健保を使うことを健保組合が了承しない場合 がある」という電子メールだ。 ○話しを聞くと、交通事故の被害者を健保扱いで診療したところ、健保組合から 「認められない」と電話がかかってきたことが何度かあったという。

◇ ○自動車保険料率算定会によると、毎年、交通事故でけがをした人の多くは自分の 健保を使わずに、自由診療で治療を受け、加害者の自動車損害賠償責任(自賠責) 保険から支払われる保険金で、治療費をまかなっている。 ○自由診療の場合でも、医療費が高くならないように設定した基準を採り入れる地 域が広がっており、将来は交通事故診療の算定基準として制度化することも検討され ている。

○しかし、健保を使うか使わないかで被害者が戸惑いかねない状態が、当分は続く 見込みだ。医療費の負担が問題になりそうな時には、地方自治体の交通事故相談所な どに早めに問い合わせた方がよさそうだ。


【8/17朝日記事】

交通事故のけが、健保が使えます 自由診療だと割高

 「交通事故で負ったけがの治療に、健康保険は使えない」と、誤解している人が意外に多い。実は、堂々と使えるのだが、病院で断られる こともある。5月に「聞きたい」の欄でこのことを取り上げたところ、体 験談や感想が相次いで寄せられた。健保を使わない自由診療は、結 果的に割高になる。その分、医療機関にとっては割のいい仕事にな るが、けがを負った患者にとっては多額の出費につながりかねない。 様々な利害がからみ合う交通事故診療の裏側を調べてみた。 (佐 藤純)  

○新潟の元会社員の例 

医師に断られて自賠責で支払い  電子メールを送ってくれた新潟県の元会社員を訪ねた。今春、自転 車で車に接触して引きずられ、足をけがした。救急車で病院に運ば れ手当てしてもらった。腰の痛みがひかず、約1カ月後に整形外科の 開業医に治療してもらった。「健康保険を使わせてください」と申し出 たが、医師は、「新潟では交通事故では健保は使えない。自賠責が あるでしょ」という。  自動車損害賠償責任(自賠責)保険の加入は、すべての自動車に 義務付けられている。けがの場合は120万円まで支払われる。「最初の病院では使えたのに……」と割り切れない気持ちのまま帰 宅した。

 加害者側との示談交渉では、事故の経緯からいって、自分にも責 任があると認めざるを得なかった。けがの治療費や休業補償などの損害額が、加害者側の自賠責の 限度額である120万円を超えると、過失の割合に応じて自分の方に も負担が生じる。

 日本損害保険協会医療調査グループの青江健策さんに、実情を尋 ねた。青江さんは「被害者の治療費が高額で、過失割合も高い場合に、 問題は大きくなる。治療費が膨らむために慰謝料や休業補償の額が 抑えられるなど、不利益を被ることもある」という。  たとえば、治療に150万円かかったとする。自賠責の限度額を30 万円超えてしまう。自分にも2割の過失割合がある場合、150万円の 2割、つまり30万円を自己負担することになる。健保を使えば、その うちの2割(6万円)を払うだけで済む。  厚生省が全国の都道府県に出した通知がある。「いうまでもなく、自動車による保険事故も一般の保険事故と何ら変わりがなく、保険給 付の対象となる」と明記されている。  通知が出されたのは交通事故が急増していた1968年。交通事故 で「自由診療」が広く行われていた時代だ。自由診療とは、厚生省が 決めた価格(診療報酬)に関係なく、医療機関が独自に価格を設定で きる方法のことだ。当時は、健保を使った診療に比べて医療費が高額になり、問題になっていた。

○医師会の言い分は

 健保使う事情を患者は説明して

 診療する側はどんな意見だろう。日本医師会に高瀬佳久常任理事を訪ねた。健保の適用を医療機関から拒まれる場合があることについて、高瀬さんは「事情があって健保を使いたいなら、患者が医療機関に説 明してくれないと。診療を受ける側の責任ですよ。私たちが責めを負 う話ではありません」と話した。 もともと日本医師会は、交通事故で健保を使うことに否定的だ。「加 害者の行為によるけがなのに、国民の相互扶助の社会保険である 健保が負担するのは、おかしいのではないか」と言う。

 交通事故をめぐるトラブルに詳しい弁護士の高野真人さんに意見を求めると、「被害者が不利益を被る可能性がある場合でも自由診療を押し付けるのは、医療機関の無理解か、使えると知っていて使わせないなら『悪徳商法』だ」と指摘する。

 では、なぜ医師は自由診療をしたがる傾向にあるのか。ある弁護士は、「車を運転する人は自賠責に加えて任意保険にも 加入していることが多い。自由診療で高い医療費を請求しても、加害 者に損保会社がついているから、もらいそびれることはない。医療機 関側にそんな意識がないとは言えない」と指摘する。厚生省が決める診療報酬が、医師側にとって満足できる水準でな かったことも背景にあるようだ。自動車保険料率算定会(自算会)が8 6年に実施した調査では、自由診療の平均単価は、健保を使った場 合の約2倍だった。

◇自由診療の基準あるが… 対象限られ強制力なし

 自由診療で治療費が高くなれば自賠責の財務を悪化させる。結果 的に、保険料が上げられるなど、国民の負担が重くなる可能性があ る。そこで、日本医師会と損保協会、自算会は89年、自賠責保険を 使って自由診療をする場合の基準案をまとめた。

 労災保険の基準に沿って、包帯や湿布などのモノの価格は健保を 使う場合の1.2倍、技術料は1.44倍までという内容。都道府県ごと に医師会と損保協会、自算会が話し合って実施することになった。た だ、対象は民間医療機関に限られ、強制力はない。

 自由診療で健保の2倍以上の治療費を取ることが少なくなかったこ ろに比べれば、一定の歯止めにはなる。でも、同じ治療を受けるの に、健保を使うか使わないかで治療費が違う不思議さは残っている。

 新潟の元会社員に「保険は使えない」と言った開業医を、訪ねてみ た。

 患者には「新基準」で請求しているという。しかし「健保は使えない」 という説明は、健康保険法や厚生省の通知に反していることを告げる と、医師は言った。「交通事故はすべて(自由診療として)自賠責でや るものだと錯覚していた」

<2000年8月17日朝日新聞から>


千田整形外科クリニック 千田 直 hanarabi@rnac.ne.jp

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