公務災害について2001/08/10

医療法人社団 谷掛整形外科診療所   谷掛駿介


労働災害のうち、公務員が公務上受けた労働災害を、公務災害といい、公務員災害補償法に 基づく療養を受けます。
 公務員以外の労働者が、仕事中にこうむったケガ(業務災害)や、通勤の途中で事故や、災害によってケガした場合(通勤災害)は、労災保険法に基づく、労災保険で療養が行われます。
労災の患者さん、必ず療養の給付請求書を持参して、労災指定医療機関を受診することになっています。実際はケガをしてから、用紙を作成する時間がなく、受診しますので、遅くとも当日か、翌日には提出する必要があるとされています。それまでは、自費での仮払いになりますので、事業者がこの費用を立替え払いします。
 労働災害かどうかの認定が、難しい場合もありますが、それは現場事業所が判断しており、その判断について、医療機関側が疑問に思えば、所轄の労働監督署に届け出ることになっています。そして労災保険指定医療機関療養担当規則などに基づき、診療契約と なります。

同じ仕事中のケガでも、公務員の場合には様子が違います。公務員の業務とは公務で、労働災害ではなく、公務災害と呼ばれます。公務災害では、労災での療養の給付請求書に相当する、療養保障請求書が、速やかに医療機関に届くことはまずありません。当日は無理としても、労災診療のように、1日や2日では届かないのが現実です。1ヶ月、3ヶ 月ならまだしも、遅いと1年も2年もかかります。診療したこちらが忘れてしまうくらい遅れます。
 公務災害での認定が遅れるのは、中央のほうまで行き、認可されるためといわれています。多分各省庁により、決済の部署が異なるために、非常に大きな違いが出ているのでしょう。本当は、各省庁にたずねるのがよいのでしょうが、各省庁側は、公務災害の療養には余り関心がないし、不便を感じていないようです。
また、公務災害の場合にも、診療の契約があるだろうと思われますが、地方公務員災害補償の支部に、公務災害についてお尋ねしたところ、療養費の支払いをする、地方公務員災害補償基金と、医療機関との契約はしていないとのことです。

 実際に起こった大きな公務災害の例に、オウムによる災害がありました。その際の療養費の支払いについては、「当該の医療費については、健康保険を使用して、治療するものとして、レセプトにその旨を記載する」という、「お達し」が下達され、契約ではないものの、災害にたいする緊急避難として、医療機関はそのように取り扱いました。公務災害医療契約について、具体的な事項の説明はありません。一方的な通知です。こう した例について、関連した書籍などの提供もなく、どのよう制度でどうすることが正しいのか、さっぱり分かりません。
医療費の算定についても、規則が明らかではありません。通常、医療機関は、労災保険に 準じて請求をしているところが多いそうですが、健康保険に準じているところもあるそうです。
 公務員の職場は広く、実際は、現場でしか分からないことが、多くあるのでしょう。現場から、自治体、さらに中央まで書類を上げていては、日数がかかるのも当たり前でしょ う。現場に責任を持たせ、処理すればよいのでしょうが、それらを、迅速に処理するシステムがないし、必要も感じていないのでしょう。

 公務災害と認定されない場合は、健康保険で給付することになり、そうなると、一部負担金をもらわなければなりませんが、認定が長く掛かっていると、事業所を変わったりすることも多く、労働者は、もう支払いにはきてくれません。当時の事業所も、この不景気では、お役所とはいえ整理統合や、部局廃止など消滅してしまうこともあります。

このように考えると、認定は1,2日で速やかに処理されるべきであって、医療機関側が、扱いに何ヶ月も苦慮することを、当然と放置することは遺憾です。労災保険に準じた給付手続きが、公務災害の現場で提出できないのなら、事務処理の、当事者能力がないことを認めて、ルールある給付を実現している、労災保険に相乗りして利用する方式に、早急に変えるべきであると思います。

参考:地方法律公務員災害補償法
参考:地方公務員災害補償の実施について(平成6年9月29日付地基企49号)