〜コアラが歩いた北山その@〜


 早いもので拙者が北山地区に病院を開業し三十年。我が家の蔦も伸びに伸び、いまでは居間の中にまで侵入し、ぐるりと弧を描く始末。道理で拙者も年をとるわけでござる。まま、左様なわけで、少なからぬ年月この界隈に根をおろしていると、時に見えざるものも見えてくるよってに、とかく浮き世はおもしろい。いつの間に増えたか、種種雑多な茶屋やら駄菓子屋やら、時には面妖な建物やらがあることを、コアラもここにいたりそのいくばくかを知るにいたる。せっかくでござるから、当院に治療に来られた老若男女のために、そうした近在の案内をば、不肖コアラめがお引き受けしようかと思った次第、ウォッホン! 
 そうじゃのまずは……おおっと、忘れてはいけないのう。ご近所の紹介をばきちんとしておかねば。義理と人情秤にかけりゃ義理が重たいこの世界……当院よりほんの3軒ばかり隣にある会川クリニック。公私とも仲良くさせていただいている内科の医院でござるから、我が病院の商売敵にもならぬゆえ(笑)、コアラも安心して紹介できるでござる。風邪を召された時などはおおいに利用なさるがよろしかろう。
 さらにまた、同じ通りには『横田や』という古めかしい店がある。ここには絵本と木の玩具がたくさんあるそうな。拙者の娘が時折利用しているようでござるが、なんでも小さなお子の土産には大変喜ばれるものが置いてある由。たとえば当院で治療後、孫のために横田やでお買い物、こんな優雅な病院通いも当世風であるやもしれぬ。
 さて、コアラは普段はユーカリばかりを食べているでござるが、いざとなれば大変な美食家でもあるのだ(だ、だれじゃ! いま鼻で笑った不届き者は!)。そんな拙者が選んだ北山界隈のおいしい食べ物屋は、うむ、そうそうあそこがよろしかろう。北山から一里ほど。山手町にある『中華仙臺そば』。拙者は醤油と塩の二種類の拉麺をば食べ比べてみたが、好むところは断然「塩」でござるな。品書きには「あっさり塩」となっておるが、それでも塩がかなりとんがっている印象ぞ。なので通は「あっさり塩」を「さらにあっさり目に」という注文になる。これぞこの店の王道。麺もしこしこしていてなかなかよろしい。なにより近頃流行りの化学調味料などを使用していないのが好感度大。食後に口中が複雑怪奇な味に支配されるような狼藉もないというわけ。昨今のこってり派拉麺の中には毒味係も卒倒するくらい化学調味料をどっちゃり入れている店もあると聞く。その点、中華仙臺は爽快な食後感を客に提供するあっぱれな商売、感心感心。よいか中華仙臺では「あっさり塩」の「さらにあっさり目」を注文するのだぞ。お忘れなきよう。
 それでは本日はこのへんで。さらばじゃ! つづく

コアラ拝

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