コアラ先生は、スポーツによって身体に生じる障害が二つに分けられる、というところから話し始めました。そして「転倒・衝突などの1回の強い力によって発生する外傷」と「繰り返しの外力により発生する疲労骨折・付着部症などの狭義のスポーツ障害」というように、運動によるけがを分類。
 今回は後者の“狭義のスポーツ障害”、すなわち「使いすぎ症候群」=overuse syndromeを中心にレクチャーを進めていきました。
 スポーツ障害はトレーニングが原因となって発生し、疼痛(うずくような痛み)のためにスポーツ活動や日常生活に支障が生じたりします。患者の訴えが疼痛である場合、ペインクリニックは非常に効果的であるにもかかわらず、いまだ、ペインクリニックが普及していないという問題点もあるようです。しかしそこは古くから仙台においてペインクリニックの医師として活躍を続けてきたコアラ先生。頚部・腰部・上肢及び下肢など、日常診療の中でブロックを行ってきた症例を紹介しながら、スポーツ障害の治療において、いかにペインクリニックが有用であるかを的確にレクチャーしたのでした。
 続いて松田病院スポーツ整形外科・佐々木健先生が“骨盤・下肢〜整形外科医の立場より〜”というテーマで講演。このお話の中には、プロスポーツ選手が試合に出たいがために、なんとか痛み止めの注射をしてくれ、といったような実例を紹介。スポーツ選手(特にハイアマチュア、プロ)の疼痛管理の特殊な側面と治療の難しさをわかりやすく説明してくれました。
 そして、最後は安田クリニックの安田朗雄先生が“スポーツ選手に対するペインクリニック〜当院で治療を行った経験から〜”という題で、ペインクリニックによって治癒した実例を数多く紹介。その後、全体の質疑応答へと移り、参加者から四人の医師への疑問が投げかけられたのでありました。
 こうした学会の講演はとかく専門的でわかりにくくなりがちなものですが、今回はスポーツ障害という、誰にとっても身近なテーマであり、最後まで興味深く聴いていた方が多かったようです。
 ちなみに、今回のペインクリニック学会においては、ミニレクチャーの他にも「リフレッシャーコース」「シンポジウム」「パネルディスカッション」「ビデオワークショップ」「特別講演」「教育講演」、ランチを兼ねた「ランチョンセミナー」など、まあ、三日間、ほんとに多くの発表や講演が行われていたのでした。
 その中には「がん患者の痛みの治療」や「リハビリテーション」、「今こそモルヒネ」等々、ためになる話も多々ありました。多くの医師や研究者が、こうした場で交流を持ち、それぞれの得意分野での成果・研究を持ち寄り検討しあう、医療の発展にとっては欠くことのできない学会であるように感じたのは、なにも来場者に配られたお弁当の内容がとてもいいから、という理由だけではないのです。 <了>
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