スポーツ障害の予防と対策について

ボーリングに起因する可能性のある障害など

1996年12月15日、愛媛県ボーリング連盟(中央ボウル)にて
★はじめに(成書から引用:東京慈恵会医大スポーツ外来部の大畠襄教授)
 われわれのすべての日常の生活活動に怪我がついて回るように,怪我はスポーツにもつきもので
ある.ただしスポーツの場合異なるのは,怪我を防ぐ機会に恵まれていることである.このことは,
よく管理されたスポーツ活動においてはいっそう明確である.すなわち怪我の診断は迅速に行われ,
適切な救急処置と,さらには治療が施され,競技へ復帰するにあたっては,有効なリハビリテーシ
ョンとスポーツ医学的な助言によって,怪我の再発を防止するように助カを受けることができるの
である.
 現代のように高齢化する社会にあっては,多くの人々が,いつまでも自分をフィットした状態に
保っておこうと,自らの体力と健康の維持に努めている.そのためジョギング,テニス,バレーボ
ールなど非常に多くのスポーツに積極的に参加する人たちが増加している.一方,競技スポーツの
世界では,年ごとにぬりかえられる新記録が示すように,高度な技術を要求されるようになり,当
然のことながら早期の技術習得となる.すなわち長年月にわたる練習と競い合いを必要とする,高
度に競技化されたプログラムに選手を巻き込んでしまう結果を生み出し,そのために選手は大きな
肉体的・精神的ストレスに耐えることを要求されるようになった.そして,このようなスポーツの
量的拡大と質的向上の当然の帰結として,「すべての人のためのスポーツ」は、「すべての人にス
ポーツ外傷・障害を」になってしまった.

★スポーツによって起る怪我の分類
外因性傷害:原因がはっきりとわかるスポーツ活動中の偶発事故のため,人体組織に損傷が与えら
れた場合をいう.この外因性傷害をわれわれは「スポーツ外傷」と呼んでいて,多くのスポーツに
起り得る.
内因性傷害:内因性傷害は,普通われわれは「スポーツ障害」と呼んでいる.この内因性傷害は,
さらに,使いすぎによる内因性傷害(overuse intrinsic injury使いすぎ障害)と,外傷性内因
性傷害(traumatic intrinsic injury)の2者に分けることができる.使いすぎ障害の場合,一
般的に起始は徐々である.はじめは特定な動きのときにのみ軽い痛み,あるいは,ある部分に軽い
けれど頑固な,なかなかとれない痛みを訴えるが,日常生活や同じスポーツでも特定な動作をしな
ければ疼痛はない.しかし,その動作を継続していると疼痛は増悪し,ついには日常生活動作にも
影響を及ぼすようになる.(

★起こりやすい疾患(ボーリングに関して)及びその対策と予防
番号:疾患名、A:症状、B:対策(治療)、C:予防法
1、頚椎椎間板ヘルニア、椎間板症
 A:頚の痛み、上肢の痛み、上肢のしびれなど
 B:頚椎の固定、理学療法
 C:頚椎のストレッチ、肩こり体操など
2、肩関節周囲炎
 A:肩関節の痛み、運動の制限など
 B:理学療法、関節注射など
 C:ウェイトトレーニング、ストレッチ、五十肩体操など
3、上腕骨外上顆炎
 A:肘の痛み、腕に力が入らないなど 
 B:理学療法、関節周囲注射、テニス肘サポーター、手術など
 C:テニス肘サポーター、ウェイトトレーニング、ストレッチなど
4、手関節腱鞘炎
 A:手首の痛み、手首・指に力が入らないなど 
 B:理学療法、腱鞘内注射、エラスティック手首用スプリント、手術など
 C:リストマスター、ストレッチなど
5、ボーラーズ・サム(Bowler`s thumb)
 A:母指のしびれ、皮膚が厚くなるなど 
 B:理学療法、ボーリングの中止、手術など
 C:ボールの変更、投法の変更など
6、腰痛症
 A:腰痛、下肢痛、下肢のしびれなど 
 B:理学療法、投薬、コルセット、ブロック、手術など
 C:腰痛体操、コルセット、ストレッチなど
7、膝内障
 A:膝痛、膝崩れ、ロッキングなど 
 B:理学療法、投薬、関節注射、サポーター、手術など
 C:筋力強化、サポーター、ストレッチなど
8、足底腱膜炎
 A:足底痛、歩行障害など 
 B:理学療法、投薬、腱鞘内注射、足底板、手術など
 C:筋力強化、足底板、ストレッチなど

9、大腿骨骨折
 ボーリング投球時に大腿骨骨幹部骨折を起こした一症例
 長谷川徳男 (江東病院); 川上和夫, 安間嗣郎, 外3名
 W2650 (1340-8577) (Z0012B) 日整外スポーツ医会誌
 VOL.8 PAGE.283‐285 1989
 24歳男性,既往歴なく,年に数回が,この数ヵ月は週二回とボーリングの回数は
 増えていた。アベレージ130, 13ポンドのハウスボールを使う。ある日リリ
 ース直前に左大腿部に激痛が走り転倒した。左大腿骨中央の前面から,下1/3の
 後面にわたる螺旋骨折を認め,screw内固定を行い,ギプス固定の後,fun
 ctional braceを用いて歩行し,現在機能障害なく社会復帰している。

[質疑・応答]
Q:PIP関節の腱鞘炎と近医で言われ、軟骨が出ているようだが治療法は?
A:PIP関節の場合は腱鞘炎よりも、変形性関節症が疑われ、X−P撮影にて診断・
  治療法を考える必用がある。
Q:腰痛体操で上体起こしは、膝を曲げてすることが肝要と言われたが、その理由は?
A:上体起こしで、膝を伸ばしたまますると腰椎の前湾が残り返って腰痛の増悪の
  原因になることがある、膝を曲げてすると、腰椎の前湾が減少し、腰痛が増悪
  することはない。
Q:かつて前腕部の筋断裂を起こしたことがあり、ボーリング中に断裂した筋肉が
  移動することがある。治療方は?手術をするとすればスポーツ復帰までどのくら
  いかかるか?
A:断裂した筋を縫縮するか、別の場所に縫いつけるような手術をした方がよい。
  術後、競技生活に復帰するまでリハビリを含めて3カ月は見ていた方がよい。
Q:指のMP部での腱鞘炎で注射などを受けたが「しこり」のようになっている。
  治療法は?手術を受けるとすれば、競技復帰まで期間は?
A:注射を繰り返して、しかも腫瘤を形成しているようなら、腱鞘切除をした方が
  よい。競技復帰まで、術後2週間でいいでしょう。

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