ロコモティブ症候群

ver2009/3/11
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ロコモとは
 運動器症候群:ロコモティブシンドロームの略です。

ロコモ;運動器症候群:ロコモティブ シンドローム(locomotive syndrome)とは
「運動器の障害」により「要介護になる」リスクの高い状態になることです。
 日本整形外科学会が、2007年(平成19年)に、新たに提唱しました。「ロコモ」の提唱には、「人間は運動器に支えられて生きている。運動器の健康には、医学的評価と対策が重要であるということを日々意識してほしい」というメッセージが込められています。
ロコモの原因
 「運動器の障害」の原因には、大きく分けて、「運動器自体の疾患」と、「加齢による運動器機能不全」があります。
1)運動器自体の疾患(筋骨格運動器系)
 加齢に伴う、様々な運動器疾患。たとえば変形性関節症、骨粗鬆症に伴う円背、易骨折性、変形性脊椎症、脊柱管狭窄症など。あるいは関節リウマチなどでは、痛み、関節可動域制限、筋力低下、麻痺、骨折、痙性などにより、バランス能力、体力、移動能力の低下をきたします。
2)加齢による運動器機能不全
 加齢により、身体機能は衰えます。筋力低下、持久力低下、反応時間延長、運動速度の低下、巧緻性低下、深部感覚低下、バランス能力低下などがあげられます。「閉じこもり」などで、運動不足になると、これらの「筋力」や「バランス能力の低下」などと、あいまり、「運動機能の低下」が起こり、容易に転倒しやすくなります。 


ロコモは国民病です。
 変形性関節症と、骨粗鬆症に限っても、推計患者数は4700万人(男性2100万人、女性2600万人)とされています。ロコモはまさしく国民病といってよいでしょう。吉村典子2009年
ロコモは、「ねたきり」や「要介護」の主要な原因です。
 ロコモは、「メタボ」や「認知症」と並び、「健康寿命の短縮」、「ねたきりや要介護状態」の3大要因のひとつになっています。
 ご高齢の方は、これらの「加齢」や「運動不足」に伴う、「身体機能の低下」や、「運動器疾患」による痛みや、易骨折性(軽微な外傷による骨折)など、多様な要因があいまって、いわば「負の連鎖」により、バランス能力、体力、移動能力の低下をきたし、ついには、立って歩く、衣服の着脱や、トイレなど、最低限の日常生活動作(ADL)さえも、自立して行えなくなり、「健康寿命の短縮」、閉じこもり、廃用症候群や、寝たきりなどの「要介護状態」になっていきます。
メタボとロコモ
 メタボ:メタボリックシンドロームは、心臓や脳血管などの「内臓の病気」で「健康寿命」が短くなったり「要介護状態」になるのに対し、ロコモ:ロコモティブシンドロームでは、「運動器の障害」が原因でおこります。「ロコモ」と「メタボ」や「認知症」を、合併する方も多いという報告もあります(吉村典子2009年)。高齢者のtotal healthの観点からは、幅広い対応策が必要です。年を取って、寝たきりや、痴呆になって、要介護となることはできるだけ避けたいものです。これらの「健康寿命の延伸」、「生活機能低下の防止」には、予防、早期発見・早期治療が重要です。



ロコモティブ:Locomotive
 「運動の」という意味です。「機関車」という意味もあります。能動的な意味合いをもつ言葉で、「運動器」は広く「人の健康の根幹である」という考えを背景とし、「年齢」に否定的なイメージを持ち込まないことが必要だと考えて、選んだものです。
運動器(locomotive organs)とは
 運動器とは、骨・関節・靱帯、脊椎・脊髄、筋肉・腱、末梢神経など、体を支え(支持)、動かす(運動・移動)役割をする器官の総称です。
ADL(エーディーエル)Activities of Daily Living 日常生活動作
 日常生活を送るのに「最低限必要な、日常的な動作」のことです。例えば,寝起きや移動,トイレや入浴,食事,着替えなどです。Aはアクティビティー(activity)で動作,DLはデイリーリビング(daily living)で日常生活の意味。直訳すれば,「日常生活のいろいろな動作」です。高齢者や障害者の身体能力や、障害の程度をはかる、重要な指標となっています。介護保険制度では、これらの動作一つ一つを、「できる、できない」で調査し,その結果で,その人に必要な介護レベルを決めています。日常生活動作が自立しているので,「通常の日常生活」が送れると誤解される場合がありますが「通常の日常生活」ではなく、あくまで「日常生活を送るための最低限の動作」を指しています。

要介護の原因
 要介護になる理由は脳卒中(29%)、老衰(15%)、認知症(13%)、骨折・転倒(11%)、関節疾患(9%)などです。
要支援の原因
 一方、要支援は老衰(22%)、関節疾患(18%)、脳卒中(12%)、骨折・転倒(11%)、心臓病(7%)などです。
(平成16年度厚労省国民生活基礎調査)
健康寿命とは(WHO:2000年)
 健康で日常的に「介護を必要としない」で、「自立した生活ができる」生存期間のことです。平均寿命より短い。平均寿命から介護(自立した生活ができない)を引いた数が健康寿命になります。日本人の「健康寿命」は、男性で72.3歳、女性で77.7歳、全体で75.0歳であり、世界第一位です。(WHO:2004年)
廃用症候群
 「安静状態」が、「長期に続く」事によって起こる、心身のさまざまな「機能の低下」等を指します。筋萎縮、関節拘縮、褥瘡、骨粗鬆症、起立性低血圧、精神的合併症、括約筋障害(便秘・尿便失禁)などが起こります。


「ロコモ:運動器症候群」と「運動器不安定症」のちがい
 「運動器不安定症」は、いわば「転倒リスクが高まった、運動器疾患」といえます。具体的には、65歳以上であること、運動機能低下をきたす疾患(またはその既往)が存在すること、日常生活自立度判定が、ランクJまたはAであること、運動機能評価テストの項目を満たすこと、が条件です。診断基準は、運動器不安定症とはを参照ください。
 「ロコモ:運動器症候群」は、より広い疾患概念です。「運動器の機能不全」のみならず、「要介護リスク」が高まった状態をさします。たとえば「階段を昇るのに手すりが必要である、支えなしには椅子から立ち上がれない、15分くらい続けて歩けない、転倒への不安が大きい、この1年間で転んだことがある、片足立ちで靴下がはけない、横断歩道を青信号で渡りきれない、家のなかでつまずいたり滑ったりする」場合などが含まれます。


参考文献
運動器不安定症とは:日本臨床整形外科学会
ロコモティブシンドロームって何? 朝日メディカル2009年3月号

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