【バネ指(小児)】

〜乳幼児の母指が伸びない〜

はじめに

 今回は母指が伸びないことによって気付かれることが多い、乳幼児のバネ指の一種について説明いたします。

病態と診断

 前回解説した成人のバネ指と異なり、小児のバネ指は、指の屈伸運動による引っ掛かり(弾発現象)を示すことはまれです。生まれたときに認められることはまれで、大半は指の動作が安定してくる12歳ごろに偶然発見されますが、母指の2つの関節のうち、付け根側の関節(MP関節)が伸びないものを先天性握り母指症、先の方の関節(IP関節)が伸びなくなったものを強剛母指と呼ぶことが多いようです。いずれも母指を屈曲させる腱の膨隆が腱の通るトンネル(腱鞘)に引っ掛かったものとされますが、前者の一部には伸筋腱の形成不全によるもの(先天性握り母指変形)があり、これはまったく別の疾患で治療法も予後も異なりますので、注意が必要です。

 診断は容易で、母指の付け根の掌側に医師が手をそえて指を動かすと腱とともに移動する膨隆結節を触れますが、成人例と異なり、圧痛を訴えることはまれです。また、診断上は強剛母指も先天性握り母指症も、実際は全く同じもので、IP関節を伸ばしてやるとMP関節が曲がり、MP関節を伸ばしてやるとIP関節が曲がる現象が見られます(下図参照)。

治療

 小児のバネ指は半数以上が自然治癒するとされ、1歳未満に発症した人は特にその傾向が強いようです。多くの専門医が3歳までに手術を勧めますが、一方では6歳までは保存的治療の効果が期待されるという報告もあります。保存的治療は、装具を用いる方法で、多くは36カ月の装着で治癒しますが、半年以上治療しても改善しないときには、手術療法を必要とする場合もあります。手術療法は全身麻酔が原則で、整形外科の中でも特に手の外科(これからは手外科と改称される予定です)を専門とする医師に相談しましょう。

おわりに

 「このまま一生親指が伸びなくなったらどうしよう…」と子どもの将来を心配される親御さんは多いと思います。気が付かれたら、できるだけ早く、整形外科専門医の診断を受け、適切な治療・アドバイスをお受けください。