住民の健康 骨粗髭症予防に対する整形外科医の役割 
佐々木整形外科麻酔科クリニック    佐々木信之
1, 私に与えられたテーマは住民の健康ー骨粗鬆症予防に対する整形外科医の役割
―であります。
2,日本には骨粗鬆症患者が1,100万人以上いると推定されております。骨粗鬆症に
伴う骨折は、「寝たきり」の原因として脳血管障害についで多く、13%も占めてい
ます。しかし、骨粗鬆症の治療は未だ困難であり、その予防が重要であることは言う
までもありません。
3,一般に、骨粗鬆症の程度を表す指標として骨量が用いられております。この骨量
は小児期から青年期に増加し20歳以前で最大骨量に達し、女性においては50歳前後
から閉経に伴う女性ホルモンの急激な枯渇に伴って減少するといわれております。こ
のため、生活習慣病としての骨粗鬆症に対する予防としては、一次予防として、いか
にしたら若いときに多くの骨量が獲得できるか、二次予防として、骨量の減少を早期
に発見していかに適切な対策を立てるかが懸案となっております。
4,そこで、我々は骨粗鬆症の一次予防の観点から青少年の食生活の動向をアンケー
ト調査しました。これはカルシュウム・ビタミンD-Kの不足、リン・食塩の過剰摂取、
ダイエット、運動の不足、多量のコーヒーなどといった生活習慣の蓄積が骨粗鬆症の
発病に大きな影響を持っているためであります。
5,アンケートの質問内容は、「骨粗鬆症は知っているか」「将来骨粗鬆症の予防に
は若い時に骨を強くしておくことが大事と言うことを知っているか」「授業以外のス
ポーツはしているか」「ダイエットの経験はあるか」「牛乳、インスタント食品、清
涼飲料水、コーヒーや朝食の摂取状況」「十月八日が骨と関節の日を知っているか」
等であります。
6,対象は高校、専門学校、大学生で男性1,023名、女性1,327名の合計2,
350名であり、年齢は16歳〜25歳、平均年齢は19歳です。
7,骨粗鬆症については96%の方が知っていました。
8,また、将来の骨粗鬆症を予防するのに若い時に最大骨量を強くしておくことが大
切というのも、73%の方が知っていました。
9,骨折は28%の方が経験しており、授業以外のスポーツは45%の方が行ってい
ました。
10,食生活の動向ですが、朝食は50%の方が毎日食べていましたが、22%は全
く食べていませんでした。
11,また、ダイエットについては、男性で21%、女性で57%の方が経験してい
ました。
12,牛乳は24%の方が毎日飲んでいるものの、36%は全く飲んでいませんでし
た。
13,インスタント食品は毎日食べている方が10%、週に数回が69%でした。
14,清涼飲料を毎日飲んでいる方が12%、週に数回が49%でした。
15,コーヒーを毎日飲んでいる方が13%、全く飲まない方が52%でした。
16,これら青少年の食生活の動向をまとめてみますと、牛乳を全く飲まない者
が1/3以上もおり、カルシュウム摂取も十分とは言えません。また、多くがインスタ
ント食品や清涼飲料を毎日あるいは週に数回も摂取しており、リンや食塩の過剰摂取
も危惧されます。さらに、ダイエット経験者も高率にみられ、最大骨量は十分に獲得
出来ないものと思われるものでした。
17,いいかえれば、青少年は、骨粗鬆症を知識としては良く知っているが、実際の食
生活と運動での生活習慣が伴っていないといえます。特にダイエット経験者が高率で、
朝食を食べない青少年が多い点は、食習慣の観点からも早急に取り上げて指導する必
要があるものと思われます。
18,さて、老人保健事業第四次計画では、がん、脳卒中、糖尿病などの他に、新たに
高齢者の生活を重視する観点から痴呆、骨粗鬆症,歯周疾患にも取り組むこととなり
ました。このため、個別健康教育など新たな保健事業の展開として、骨粗鬆症検診が
40歳・50歳での節目検診として独立した項目として追加されております。これに
伴い平成12年度から骨粗鬆症検診が全国の市町村で行われております。
19,ここでは、二次予防の観点から仙台市で行われている骨粗鬆症の節目検診ついて
の現況を報告したいと思います。検診のシステムとしては、まず保健所から対象者に
受診券と登録医療機関名簿を送付し、一次検診として登録機関で問診と骨量測定を受
けてもらいます。異常なし、要指導、要精検の3段階の判定を受け、要指導の方は保
健所で事後指導を、要精検の方は6施設の医療機関で精密精査を受けていただいてお
ります。
20,判定基準は、異常なしがYAM90%以上で危険因子のない方、要指導がYAM90%
以上だが危険因子のある方、またはYAMが90%未満80%以上の方、要精検はYAM8
0%未満の方です。
21,平成12年と13年についての結果ですが、受診者はそれぞれ1,841人、2,
228人であり、要指導が296人、336人で16%、要精検が43人、39人で
2%でした。さらに、精密検査では、骨量減少が8人ずつ、骨粗鬆症は原発性と続発
性がそれぞれ7名ずつでした。
22,登録機関の申請は任意であり、現在、171施設が登録しています。内科が93施設
(54%)、整形外科31(18%)、外科28(17%)、産婦人科19(11%)と、内科の比率が
圧倒的に高く、整形外科は思いのほか低いものでした。
23,平成12年から全国の市町村で施行されてきている骨粗鬆症の節目検診の成果は
まだ明らかではありませんが、仙台市での検診結果をみると、要指導が16%、要精
検が2%であり、早期発見に果たす役割は大きいものと思われます。しかし、検診に
登録参加した整形外科施設はその半数にも至っていませんでした。骨と関節を専門に
掲げる整形外科医は、骨粗鬆症の二次予防に重要であるこの検診に積極的に参加すべ
きものと思われます。
24,一方、青少年で行ったアンケートでは、整形外科で作り上げた「骨と関節の日」
について、知っている方は僅か1%でありました。これは整形外科医の活動がまだまだ
国民に定着していないことを示すものであり、これらの改善に向けて一層の努力が必
要と思われました。
25、まとめ
骨粗鬆症の予防において骨と関節を専門に掲げる整形外科の果たす役割は大きいもの
と思われます。しかし、骨粗鬆症の予防の観点からみても、住民の健康管理に対する
整形外科医の貢献度は低く、住民からの認知度も低いものでありました。今後、これ
らの改善に向けて一層の努力が必要と思われます。