座談会 日本の整形外科を考える*2004/5/25update

目次

1)座談会について
2)整形外科医の適正数
3)卒後教育のあり方
4)整形外科のアイデンティティの確立
5)柔道整復師への対応
6)「整形外科」という名前
7)整形外科医療供給体制の将来像
8)整形外科医の将来像

座談会について

(第76回日本整形外科学会特別企画より)
座談会出席者 山内 裕雄*1) 国分 正一*2) 角南 義文*3)本田  忠*4) 山本 博司*5)


 富田勝郎第76回日本整形外科学会学術集会会長のご発案で学術集会では初めての試みである座談会が行われた.
 討論者はいろいろな面でリーダー的活躍をなさっていらっしゃる錚々たる方々で,日本の整形外科の諸問題点について忌憚のない討論が行われた.しかし,司会者の不手際で尻切れトンボにも終わったことは申し訳ないと思っている.
 1,000名近くの来会者にはテレビのリモートコントロールのような器械を手渡し,適宜設問(Q)に回答を得た.「臨床整形外科」編集部がその要略をまとめたものをここに再録する.紙数の都合で不十分なものになったことをお許しいただきたい.
(山内裕雄)
 * 2003年5月23日,金沢にて収録
*1) 順天堂大学名誉教授=司会
*2) 東北大学教授
*3) 竜操整形外科病院院長・日本臨床整形外科医会(JCOA)理事長
*4) 本田整形外科クリニック院長
*5) 高知医科大学名誉教授・日本整形外科学会(JOA)理事長

整形外科医の適正数
山内  日本の整形外科医は全医師数の約8%近くになります.一方,アメリカでは数年前にこのままでは5%近くになるというので,新レジデント数を制限することとなり,韓国も同じことを始めたようです.これには整形外科医の守備範囲が大きく関係します.アメリカの整形外科医は手術に偏っているため,数が増えると競合が激しくなるために,この問題は切実ですが,日本は必ずしもそうでありません.
山本  現在の数が適正かは難しい問題です.最近,学生の整形外科医の希望数が減る傾向にあるとの意見を受け,現在日整会で調査しています.専門医試験の受験者数も3年ほど前からやや減少傾向です.近いうちに動向を報告します.
国分  私は3年ほど前に,人口補正をして日本と各国の整形外科医専門医数を比較したところ,日本に比してアメリカ58%,カナダ41%,英国41%,韓国70%,香港54%で,どの国も日本より少なく,さらに減らし始めています.ことに英国ではGP(generalpractitioner)が存在し,整形外科医の多くは手術ばかりです.このGPの役割を,日本では多くの整形外科開業医が果たしています.日本にはアメリカの約2倍の専門医がいますが,多いという感覚はありません.役割が分業化していますが,今後もそれを進めざるを得ないのではないでしょうか.
角南  民間の一般病院の立場から言うと,標欠の問題があります.医師数は医療法ならびに診療報酬で制限を受け,少ないのが現状です.ただ,これが医療法とか診療報酬上の標欠を満たせば,日本の医療費は安くて医師の給与を満足に出せないというジレンマです.専門医は大学病院に偏在し,昔の無給副手に相当する人間が大勢いて,この体質がいまの専門医偏在を来していると考えています.
本田  日本の人口は2020年ごろまで増加し,老齢化は2030〜35年まで進むと言われ,老年期疾患を対象とする整形外科の需要はあるでしょう.自由開業制ですので,全体で抑制するしかないだろうと思っています.
山内  整形外科専門医がゲートキーパーを担うことが果たしてよいのかという問題もありますね.

Q1:整形外科医の適正数はあるべきか
 考慮すべき(51%)
 必要ない(33%)
 どちらともいえない(16%)




卒後教育のあり方
山内  卒後教育の問題点として「大学病院偏在」があげられます.臨床教育よりも基礎的研究に主眼が置かれ,一方,観血的治療に傾き,一般的な骨関節疾患の保存的治療がおろそかにされがちです.
 2004年から臨床研修が義務化され,スーパーローテーション制度となりますが,これが果たしてうまくいくのか.加えて専門医制度やサブスペシャリティ専門医の問題もあります.
国分  一概に答えにくいですが,例えば臨床医をどう育てるかについては,現在,大学は予算が絞られ,文科省から研究中心の大学院生数の確保が求められます.したがって,大学では専門医を養成するシステムは作りにくいのです.そこで私どもの教室と同門では「専修医制度」(6年間)を作りましたが,大学院入学は卒後4〜6年となり,そこがジレンマですね.
 スーパーローテーションについては,そのねらいとプログラムは別にして,現状では機能しないのではと危惧します.かつてのインターン制度に似て財政的なバックがないため難しいでしょう.
角南  私どもが大学にいた頃も教育時間が少なかったですが,いまの学生に聞いても整形外科の本質は学んでいない気がします.
 スーパーローテーションでは受け入れる側から「入局しない者に本気で教育できない」という声も聞こえてくることから,有名無実になるのは明らかな気がします.ただ,自分の科以外の経験がないよりはマシでしょう.
本田  臨床研修制度が始まると,例えば青森には研修医が残らないなど医師の偏在が起こります.その点は医師の適正数の問題ともからめて考えていただきたい.例えば私どもの大学では卒業生の約30%しか残らないということになれば,地域医療を支えきれません.
フロアから 星野雄一(自治医大) 整形外科の卒前教育に占める比率が比較的少ない理由の1つは,国家試験での出題題数が500題中10題前後で,耳鼻科や眼科よりも少ない.ぜひ学会から働きかけて,出題数増加をお願いしたい.
寺山和雄(信州大学) 教育職の選考基準が問題です.
山内  システムだけ変えても,教育者の自覚がなければ同じことになってしまう.私は,アメリカで臨床教育を一部受けましたので,その印象が強烈です.近年発行された,『アメリカの医学教育 アイビーリーグ医学部日記』(赤津晴子著,日本評論社),『ハーバードの医師づくり』(田中まゆみ著,医学書院)をぜひ教育者側に読んでいただきたいと思っています.

Q2:卒前,卒後教育の在り方,卒前教育はこのままでよいか
 大幅に改革すべき(79%)
 ほぼ現状でよい(21%)


整形外科のアイデンティティの確立

山内  整形外科と他科との関連ですが,文科省は整形外科を大きな科としてとして認めていません.他科との競合の中でリウマチ,神経など整形外科の領域を防衛する必要があります.それには,整形外科が医学界,日本医師会などでもっと強くなってほしいと思いますが,それにはどうするか.
 さらに,「整形外科」という科名を存続すべきか,それとも変更すべきか,またその代案はどうか.さらに医業類似行為者への対応ですが,柔道整復師(以下,柔整師)の増加は目覚ましく,新設校ができて現在59校になり,3年後には年間5,700名の卒業生が輩出されます.整形外科は約500とその10分の1です.加えて,その他の代替医療に対する問題もあります.
 私は,整形外科の社会的なPRが問題で,そのためには政治力の向上やマスコミ対策が重要と思っております.
角南  現在の医療保険では,打撲・捻挫・脱臼・骨折の外傷は,整形外科と柔整師の2階建てです.国庫負担2,700億円を削るために,去年4月の診療報酬改定でひどい目に遭いましたが,柔整師の打撲・捻挫だけの施術への健康保険の支払い額は3,000億円です.各県に審査委員会がありますが,請求書の不正が多いという話も聞きます.これでは医療の質を下げ,無駄な税金を使っていることになります.この点を整形外科医が熟知し,正しく対応することを希望します.
本田  日本医師会には現在,整形外科医の理事はいません.科別の比率は内科30%,整形外科8%です.
 整形外科という科名の問題ですが,一般の方の整形外科の認知度は,調査の結果この30年間でほとんど上がっていません.私はインターネットで健康相談をしていますが,いまだに美容外科と間違われます.科名は浸透していないと痛感しますし,種々の誤解を生んでいると感じています.
 社会的PRの問題ですが,日整会のHPは貧弱すぎます.もう少し一般の方にサービスするような健康相談やガイドラインを載せるなど,目に見える形で社会的サービスをすべきです.
国分  いままで整形外科医は,患者さんが豊富にいると安心していたのではないですか.出来高払いでは患者数は大事なファクターですが,それが質の低下をもたらし,整形外科医離れが起きていないか,あるいは整形外科への理解を妨げていないか,もう1度考える必要があると思います.
 同時に,日整会全体で整形外科の守備範囲をはっきり決め,専門医資格を取る研修内容の中にしっかり書き込み,充実した研修を実現しなければいけません.その意味では,各スペシャリティ学会との連携の中で充実を図っていく必要があると思います.
山本  整形外科医が広く医療を提供するためには,整形外科専門医を育てる指導医の基準を明確にし,指導体制を整えることが必要です.しかし,整形外科の垣根の中だけを防衛してもだめで,整形外科医がスポーツやリウマチなど広い分野について,整形外科を中心に発展する方向に活躍すべきです.
 科名は,個人の意見では,名前を変えるのではなく,整形外科医が運動器医療に取り組みんでいることを国民に話すべきで,将来,もし名前が変わるときがくれば,それでよいと思っております.


柔道整復師への対応

角南  柔整師が増えるなら,日整会は数では太刀打ちできません.本来,柔整師は,打撲・捻挫と骨折・脱臼の応急処置以外はできません.ところが最近では,膝関節変形症,五十肩なども膝や肩の捻挫として診ています.韓国と同様に,柔整師の開業は一代限りで,次の世代には開業させないとしなければ,医療に混乱を来すと考えています.それは即ち,国民医療に混乱を来すことです.
山内  柔整師の問題は,歴史的にも紆余曲折があったと聞きます.柔整師に対して整形外科医が「その行為は違法である」とどうPRするかも重要と思います.
フロア
から
櫻井實(東北大学) 昨年の日整会で整形外科領域のリハビリテーションの現状について,東北地方の200の病院の状況を報告しました.アンケートの回答に大半の整形外科医は,「柔整師の処置を自費ならある程度認めざるを得ない,健康保険は本来医師免許のもとに行われる治療に与えるべきだ」という意見でした.医療費削減と並行して自由診療が復活する兆しもあり,これは日整会が厚生労働省に申し出てもよいのではと思います.
山内  この問題について浜西千秋教授(近畿大学)から書面で意見を頂戴しています. 「1.整形外科医は開業医,勤務医を問わず,医業類似世界があることを教育され,十分に患者さんにその違いを説明できねばならない.患者の口コミの影響は大きい.『あんなところへ行ったら危ない』というだけでは駄目だ.2.点数にならないといって,電気治療やマッサージや牽引といった消炎鎮痛処置から手を引いてはならない.患者さんの身体をしっかりと触れ,スキンシップの通う治療を行うよう努力する.X線だけ見て『たいしたことはない』と突き放すのは禁物.自分でも気持ちのよい医療を実践する.3.明らかな施療過誤による障害例,増悪例は報告するように勧める.4.JCOAが運動器を扱う臨床家の政治連盟の結成を目指しているので,結成された暁には積極的に加入すべきである」以上です.
フロア
から
杉岡洋一(九州大学) 以前に大学設置審委員をしていましたが,ある大学が「柔道整復学部を創りたい」と申し出たのを受けて,私は「それは学問ではないではないか」と申し上げました.文科省は当時,創る姿勢にありましたが,その場合,日整会として早急に対応する必要があると思います.柔道整復師の方は非常に政治力が強い点をご留意いただきたいと思います.
フロア
から
高倉義典(奈良医大) 海外43カ国の代替医療を調べたところ,整形外科医との間にいろいろなトラブルが起こっています.たとえばアメリカの足の治療師(ポダイアトリー,podiatry)は20年前までは外反母趾や嵌入爪だけを扱っておりました.しかし,州議会などに働きかけて徐々にテリトリーを広げ,足関節部の治療から最近では州によっては人工膝関節置換術まで行っています.これらは全く政治がらみで,ある州で医療類似業者が強引に扱える医療分野の拡大許可を得ますと,2・3年後には全州にその許可が広がっていっています.イギリスやスペインでも同様のことが起こっています.一方,韓国では従来からあるbonesetterは現在の有資格者で終わり新たに認められないので,減る一方で現在その数は百数十名です.これらはやはり政治力が大きく影響しているものと思われる調査結果でした.
国分  政治力とは政治家への働きかけと考えがちですが,われわれは草の根的な運動も考え,底力をつける必要があります.その意味で「Bone&JointDecade」は重要ですが,なかなか盛り上がりません.これが私たちの力をつけるチャンスと認識して,市民の啓蒙活動を強めていくべきです.
山内  この件については,ある程度は協調体制を組んだほうがよいのではないか,という意見もあろうかと思います.
山本  柔整師の健康保険適用は昭和9年からの歴史があり,厚労省も既得権はどうにもできないといいます.柔整師が国家試験までにどのくらいの教育を受けているか,それから,彼らが学ぶのは古典的な柔道整復学で,整形外科学は同じではないことからも,協調はできません.このことを目の前の患者さん1人ひとりに語りかけないと無理だろうと思います.


「整形外科」という名前

山内  科名について津山直一先生(東大名誉教授)から「いままで綿々とやってきた整形外科の名を捨てるべきではない.もっとPRすべきだ」,上羽康夫先生から「保存的治療が多いから『外科』をとったらはどうか」という意見などがありました.
フロア
から
小林晶(福岡整形外科病院) 個人的には津山先生に賛成です.先輩の努力を忘れてはなりません.むしろ,患者の理解の阻害にはマスコミの影響が大で,NHKでさえ「犯人が顔の整形をして」と言う.これには日整会上層部が反論してほしい.そのことのほうが大事だと思います.
フロア
から
藤野圭司(浜松・開業) いまのご意見に反論するようですが,この4年ほど診療報酬の問題にかかわっており,日本医師会,厚生労働省と折衝するのですが,今回の診療報酬改定で,整形外科医は非常に大きなダメージを受けました.最もダメージを受けたのは理学療法です.理由はこの整形外科の名前にあると思っています.残念ですが思い切って「運動器科」に,整形外科の理学療法は「運動器のリハビリテーション」と変えたほうがよいと思っています.
フロア
から
長屋郁郎(名古屋) 現在,中国や台湾では「骨科」で,対象がわかるとのことでこの名前をつけたそうです.臨床的には大衆にわかるようにしたほうがいい.

Q3:整形外科の科名について
 このままでよい(51%)
 変更すべき(49%)

Q4:変更するとしたら代案は(変更すべきとした方に)
 骨関節外科(5%)
 骨関節科(20%)
 運動器外科(6%)
 運動器科(61%)

角南  柔道整復師はきちんと仕事をされるグループが本流ですが,問題はお金儲け一本のグループがあり,次第にこの数が増えていることです.

Q5:急増する柔整師への対応について
 徹底的に戦うべき(70%)
 ある程度協調態勢で臨む(10%)
 それらの両面作戦で行く(18%)
 なんともいえない(2%)


整形外科医療供給体制の将来像

山内  医療を取り巻く状況として,マネジドケアはすぐそばにきています.医事紛争件数が増加し,医療の安全性が強く問われています.そのためには,アカウンタビリティ(説明責任)とトランスパランシー(透明性)が強く要求されます.医療の効率性が追求され,EBMが導入されていますが,都合よく使われる危惧もあります.さらに適正医療の査察が厳しくなり,アメリカでは「ピア・レビューシステム」がありますが,日本は歴史的に同僚批判の経験が乏しい.このような変化にどう対応していくかについては.
本田  医療費は,世帯あたり可処分所得,医師数,70歳以上人口,老人入院外自己負担,老人入院自己負担,被用者本人自己負担,医科診療報酬,薬価基準:医療費ベース,この係数で決まることになっています.
医療費の重回帰式(日医総研)
総医療費=37.5(世帯当たり可処分所得)+1804.6(医師数)+2473.6(70歳以上人口)−2.0(老人入院外自己負担)+4.9(老人入院自己負担)−1541.1(被用者本人自己負担)+387.9(医科診療報酬)+582.1(薬価基準:医療費ベース)
 最も影響が大きいのが本人の自己負担で,大きくなればなるほど医療費は減るということです.その次に70歳以上の人口です.診療報酬が上がれば当然医療費は増えますが,係数としては大きくない.あくまでも,自己負担が関係しています.「重相関係数の寄与率」といいますが,相関係数0.998ですから正確な数字といえます.
 そこで問題なのは,自己負担はほぼ限度にきていますので,これから数年はおそらくは診療報酬にシフトします.国家財政が破綻しているため,その中で診療報酬,急性期医療をどんどん下げ,医師数も減らすと予想しています.包括化すれば最初はいい値段をつけるでしょうが,極端にいえば,最初は500点だったものが200点ぐらいとなることも起こってくるだろうと思っています.
角南  日本は医療費が高いと勘違いをされています.日本の医療費はほぼ30兆円でGDPの7.2%ですが,アメリカは14%.日本はアメリカの1/5の医療費で世界一の平均寿命,健康寿命なのです.これでなぜ医療費が高いと言わなければいけないのか.一方で健康保険のミニマム・スタンダードを作ることも必要ですが,外保連などでは移植医療も健康保険を適用してくれという.心臓移植1回で約1億近い費用がかかりますが,健康保険で診るべきなのか.その一方で膝の痛みの治療は自費なのか.このような点を皆で考えないといけませんね.医療費を30兆円に抑えるなら,国会議員も役人も半分にしたらいいという議論をしなければいけないと思っています.
国分  国民医療費30兆円をこのまま据え置くのは無理です.私が厚労省の方とお話しして疑問を感じるのは学生数です.おおよそ7,000名が毎年卒業し,引退される方は3000名で,毎年4,000人医師が増えるとします.その給料を生み出さなければいけません.医師が増えることは医療供給が濃密になることで,つまりは医療費がかかることになります.1人あたり,例えば年間に1億5千万の売上をすれば,4,000人で6,000億円自然増します.この点を考えなくてはいけないと思います.
 人口比でみると,アメリカの医師数は日本の144%,イギリス89%,カナダ117%,韓国61%,香港65%です.アメリカは医療費が豊富で医師は比較的よい生活ができますが,カナダは117%で給料が低いと嘆いています.原則は国民医療費を上げることです.
山内  無責任に大学を作った国の責任もあるでしょうが,医学部の定員数削減に対応する必要があります.ただ,その実行があがるのは10〜20年先の話です.
 アメリカの市場原理の医療が,いかにひどいものであるかは『市場原理に揺れるアメリカの医療』(李啓充著,医学書院)をぜひ読んでほしい.すでにアメリカの医療は危機に瀕しているのに,なぜ日本はそれを模倣しようとするのか.市場原理で医療の質が向上し価額が下がるのは幻想だと述べられています.
フロア
から
杉岡(前出) 医療費が少なすぎるというのは,間違いないことです.そのことを国民に理解していただき,どういう医療を望むのかをとことん討議して,合意を得ることが必要です.


整形外科医の将来像

山内  医療供給体制の2極化は厚労省が20年以上前から狙っていた点で,このはざまにある中小病院は運営が難しくなりつつあります.さらに,整形外科医の生きる道はどうなのか,などの問題があります.開業医は整形「内科」にならざるを得ず,手術経験の豊富な医師がメスを捨てざるを得ないのは悲劇であると同時に才能の浪費です.
角南  私は開業後も医学レベルを護持したいと,大学の中核となる方々と切磋琢磨して現在の病院を維持しているつもりです.患者さんに医療の保証もでき,われわれも勉強の意欲が出ます.
山内  整形外科を中心とした単科の大病院が増え,その次にはソロ開業の先生方がグループ化され交替で手術を行い,研究も行うという,いわゆるアメリカ的なグループ開業のシステムができないかと思っています.
国分  好むと好まざるとにかかわらず,大学が市中病院の人事にかかわっています.今後の勤務医の形態は,手術の効率化ということで手術症例を一箇所に集中化する必要があります.日本の問題点は,病院の設立母体が様々で統一しにくいのですが,どこかで踏み切らざるを得ないでしょう.一方で,勤務医が一般的な整形外科も行っている.Generalとsubspecialtyの二局化を考える必要があります.

Q6:今後の整形外科のありかたについて
 外科的治療に徹すべき(25%)
 内科的治療を大幅に取り入れる(44%)
 リハビリを主体に行う(16%)
 わからない(15%)

Q7:今後の整形外科医療供給体制について
 現状のままでよい(13%)
 グループ化が必要(69%)
 わからない(18%)


山内  ITを医療の面でどう使いこなすかですが,オンライン症例検討や生涯教育,医療供給者や患者さんへのPRも可能になりそうです.それから電子カルテの是非もあります.私は,入れるべき情報がしっかりしなかったら,いくら電子カルテにしても意味がないと考えていますが.
本田  今日の討論はメーリングリスト(ML)そのものと感じました.200〜300人の方が集まって様々な問題について討論するのは,毎晩ネット上で同じことをやっています.臨床整形外科医会ではMLには1,500人が入会されています.私のMLでは1日50通ぐらい,先生方が喋っています.しかし,勤務医のMLを作ったところ,基本的なメールに対する感覚がわかっていないことには困りました.意識が仕事だけに向き,社会性がまったくありません.「俺は仕事だけやっていればいいんだ.他のことは知らん」という方が特に若い先生に多く,壁を感じました.
山内  明治以来,日本は脱亜入欧に励んできました.整形外科も例外ではありませんでした.しかし今後はアジア諸国に目を向け,今後の国際化社会にどう対応すべきか,また整形外科の今後の夢ですが,時間切れになってしまいました.
 活発なご討論,ありがとうございました.整形外科の発展を心から願っております.


Q8:最後に,この座談会について
 有意義であった(91%)
 あまり意義はなかった(9%)