QOLと整形外科1999/6/9

Quality of Lifeとは


QOLは『生活の質』と訳されていることが多いのですが、『生活の質』とは何か?
これは、大変範囲が広く、捉え所がないような感じがします。
整形外科では、その対象疾患の性格上、生命の維持を目的とした医療を、あまりしません。日常的には、脳死移植や、スパゲティ症候群と言われるような患者さんを、対象としない、ということになります。言い換えれば、残っている人生をいかに楽(らく)に楽しくすごすか、というための医療ということになると思います。
生活の質で、問題になるのは、医療を行う側の治療に対する哲学ということになります。先ほど述べましたように、少しでも痛みを少なく、生き甲斐を全うできるように、その患者さんの身体の環境を整えることを考えるのが、基本的な整形外科の哲学と考えています。例えば、関節の痛みを軽くして少しでも歩けるように人工の膝や股関節の手術を考慮する。また、人間の二本足歩行の宿命である腰や首の痛みを軽くする方法を考える。寝たきりにならないように、大腿骨頸部骨折の治療方を選択する。
 いずれも、患者さんのQOLを維持ないしは向上させるため、考えるわけです。
 非常に狭い範囲で考える時、対象を障害者として、QOLを高めるために、ADL訓練を行うという概念がありますが、整形外科では、必ずしも障害者のみが対象ではないと考えます。
 例えば、入院していた患者さんを、自宅での療養に持って行くにはどのようにすべきかということも考えることがあります。近年、在宅医療が声高に叫ばれ、理念は結構なのですが、それをサポートする行政の対応、介護する家族の負担など問題は一向に解決されていません。というように、現状の整形外科ないしはリハビリテーション科では、主に入院患者さんが通院に移行するまでを主な対象としています。しかし、退院後も通院ないし在宅でのケアが必要な患者さんが殆どです。
 そこで、2000年4月から開始される予定の介護保険の重要性が認識されてきます。しかし、現在想定されている制度では直ぐさま綻びが出てくることが予想されています。その制度を円滑に運営して行くためにも、消費者である市民側が問題点をどんどん指摘して行政側に改善を要求してゆくことが大事ですし、サービスの供給元である医療・福祉側も指摘・改善が必要だと考えています。