毎日新聞大阪本社への抗議


毎日新聞大阪本社への抗議


日臨整第65号平成11年10月28日
毎日新聞大阪本社
編集局長  殿


日本臨床整形外科医会
理事長  安部 龍秀
副理事長 山下 恵代
担当理事 竹林俊一郎


秋冷の候、貴職には益々ご清栄の事お慶び申し上げます。
さて、10月17日(日)貴社大阪地方版及び全国版によりますと「交通事故の自由診療報酬は高額で自賠責保険金の上限(120万円)を圧迫し、被害者の補償(慰謝料や休業補償)も削られ被害者救済に影響を与えている。」との掲載記事がみられました。これには事実誤認が多くみられます。資料を添えて説明し、抗議いたします。

1. 交通事故診療については救急医療的要素があり、医療機器の整備やスタッフ配置など医療体制・経費的な面からも配慮され、日本医師会では日本損害保険協会・自動車保険料率算定会なる三者協議会でのとり決めで健康保険とは切り離し、労災保険に基づいた自由診療として診療に当っています。

2. 交通事故の自由診療に当っては、日医新基準を採用するかしないかは独禁法に抵触するという考えもあるのは事実ですが、各県の事情も違うので決定は各県の医師会に任されております。また県によっては日医新基準は採用しているが、各医療機関毎に採用を一任する「手あげ方式」をとり入れているところもあります。故に日医新基準の採用・非採用を批判することは不適切であります。

3.日医新基準を採用している医療機関の外来診療では、健保診療の2倍近くの治療費となる場合もある。日医新基準を採用していない医療機関では、90%以上が健保基準の2倍の医療費であるので、新基準を採用していない医療機関が不当に高いとはいえません。

4.毎年、自動車保険料率算定会が政府に提出している「自動車保険の概況平成9年度版」によりますと120万円までの自賠責保険のカバー率は82%であり、治療費の平均は21万円であります(第15図)。
被害者の医療費・補償を含めた平均支払い保険金は59万円であり、120万円の範囲で十分賄われています(第10図)。 死亡見舞金を含んでも82万円であります。 残り18%は入院したり、手術を受けたりした患者であり、中には初期の段階で100万円を越えるものもあります。これらの人のため任意保険があり、これを行使することに何ら躊躇してはならないと思います。しかも自賠責保険の累積黒字は3〜5兆円ともいわれており、識者に常々問題点として指摘されている現実があります。

5.貴社のご意見は健保を使用するのが原則、という論理がうかがえます。交通事故で健保を使用した場合、国民から強制的に徴収した健保財政から当然、損保会社あるいは加害者が負担すべき金額が保険者から求償されなかったり、求償されても過失割合に基づいて、ごく一部しか返却されていないのをご存知でしょうか。これも健保財政の赤字の一原因です。
以上の如く、交通事故の自由診療は正当なものであり、貴社記事の“医療機関のもうけ優先”は片寄った見解からの内容であります。今後資料を充分に活用され慎重にとりあつかわれる事を希望いたします。