交通事故のけが 健保が使えます


平成12年8月17日(木)朝日新聞全国版「くらし」欄についての抗議文


平成12年9月6日 日本臨床整形外科医会 理事長 安 部 龍 秀
日臨整第30号 平成12年9月4日
朝日新聞社東京本社編集局長 秋山耿太郎 殿
日本臨床整形外科医会<
理事長  安部 龍秀
担当副理事長 山下 恵代
担当理事 竹林俊一郎


 初秋の候、貴殿には益々ご清栄のこととお慶び申し上げます。さて、8月17日(木)貴社全国版「くらし」欄によりますと「“交 通事故のけが 健保が使えます”健保を使わない自由診療は、結果的に 割高になる。医療機関にとっても割のいい仕事になるが、患者にとって も多数の出費につながりかねない」との掲載記事がみられました。これには事実誤認が多くみられますので抗議を致します。


1.交通事故の治療費が健保より高いのは当然であります。交通事故診療については救急医療的要素があり、医療機器の整備やスタッフの配置など 医療体制・経費的な面からも配慮され、交通事故医療は1.7倍の経費という高裁判決もあります。日本医師会では日本損害保険協会・自動車保険料率算定会からなる三者協議会でのとり決めで健康保険とは切り離し、「労災保険に基づいた自由診療」として診療に当たっています。


2.この労災保険に準拠した自由診療は「日医新基準方式」と称し、今 や47都道府県中約40県が採用しています。この日医新基準による と、その治療費は健保の2倍にはとても及びません。特に入院費では 1. 5〜1.6倍にしかならないと云われています。この日医新基準が不当に高いとは云えないと思います。


3.それでは自賠責保険は何のためにあるのでしょうか。ちょうど労災事故に遭った人が労災保険で診療を受けるのと全く同様の考え方でよ いのではないでしょうか。交通事故なのに強引に健康保険診療を行使することは、労災でいえば「労災隠し」と同じことだと思うのです。 交通事故診療の為の保険が自賠責保険なのです。貴殿の交通事故で健保使用を勧める考え方は自賠責保険そのものをないがしろにするものであると思います。


4.もちろん交通事故でも被害者の過失が100%、或いはそれに近い場合や、加害者が不詳だったり、支払い能力がない場合には緊急回避的に健康保険の使用を認める場合もあります。それも保険者に健保使用の届け出をして健保相当分の診療費は保険者が改めて第3者に請求することになります。交通事故の医療費は加害者またはその代理人である損保会社が負担するのが当然であり、自賠責保険でなければ被害者の慰謝料も後遺症補償も賄えません。


5.貴殿のご意見では健保使用を奨励している気配がうかがえます。交通事故で健保を使用した場合、国民から強制的に徴収した保険料と国民の税金で運営する健保財政から、当然損保会社あるいは加害者が負担すべき金額が保険者から求償されなかったり、求償されても過失割合に基づいてごく一部しか返却されないことがあります。これも健保財政赤字原因の一つなのです。それに反して自賠責保険の累積黒字は 3〜5兆円になるという皮肉な事実が問題となっているのです。


 以上の如く、交通事故における自由診療は正当なものであり、貴社記 事の「交通事故のけが 健保が使えます」は片寄った見解からの内容であり、事実誤認があります。 この記事に対して訂正を求め、今後慎重に扱われることを希望いたし ます。

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