21世紀の医療


21世紀の医療

1997/5/7


21世紀はもうすぐですが、社会構造も疾病構造も大きく変り、医療も大きく変ろうとしています。

社会構造の変化
1)高齢少子化社会がはじまっている。
 現在の日本では平均寿命が伸び、そして出生率が減少してきています。将来もこの傾向は続きます。お年寄りの医療費は老人拠出金という名目で、平均で30%以上が若い方の保険料から出されています。若い方がお年寄りの健康を支えているわけです。このような状況の中で、現在の社会保障制度がなりたたなくなってきています。
2)寝たきり老人の増加。
 また現在、寝たきりや痴呆症のお年寄りが全国で200万人います。これが30年後には520万人まで増える見込みです。また、介護する人の2人に1人は60歳以上のお年寄りです。しかも、家庭での介護者は9割が女性です。また介護期間も長期化してきています。女性の犠牲のもとに、いまの介護はなされているわけです。

医療の現状
1)医療費の高騰
 救急や移植医療など、医療の高度化。人件費の高騰などにより、医療費の増大がおこっています。
2)疾病構造の変化
 結核を始めとする感染症が急速に減少し、今日では成人病などの慢性疾患中心になってきました。いわゆる生活習慣病です。日常生活での注意や、健康教育・健康相談など、病気や障害の予防が大切です。
3)患者さんの大病院集中
 患者さんが、大病院に集中して、病院の本来の機能が発揮できないだけでなく、三時間待ちの三分診療など、患者さん自身の利益も損なわれている面があります。診療所や小病院は、本来、地域住民に最も身近な医療機関として、患者さんの健康相談に応ずるなど、日常の生活、健康状態を熟知した「かかりつけ医」の機能を果たしています。どんな病気でも大病院を、直接受診するようなことはせずに、まず、各自で何でも相談できる、かかりつけ医をつくり、そこでいろんな相談をする姿勢が大切です。

各種対策
 高齢化が一層進行するとともに、家族の介護力が低下し、寝たきりや痴呆性といった要介護老人に対する介護の問題が大きな社会問題となっています。とりわけ在宅福祉サービスは十分ではなく、福祉と医療のアンバランスがあります。今までは医療と福祉が十分に分けられていなかったわけですが、これからはある程度はっきり別れます。
1)医療における対策
 まだ流動的ですが、高齢者医療制度の創設、施設体系の整備、薬の制度の改革などが討論されています。いままでは医療施設は診療所と病院の2種ぐらいだったのですが、今後はまず、全体のベット数を削減し、急性期にかかる病院と、慢性期にかかる医療施設にわけられるようです。急性期から慢性期までの各種施設体系を作り、各々の患者さんの病気の時期にあった施設に受診することになります。
2)寝たきり老人対策
 ゴールドプランというものがあります。目標は、2000年までに特別養護老人ホームが29万人分、老人保健施設が28万人分、介護・療養型医療施設が19万人分、在宅サービスの3本柱です。その他、ホームヘルパーが27万人、ショートステイが6万人、デイサービスが1万7000ヵ所作る予定です。
 1人のお年寄りを世話するのには、特養では平均で27万円、老人保健施設では33万円、老人病院では40万円以上かかります。いま待機者が全国で10万人いるということです。
 医療にしろ、年金にしろ、世代間の支え合いの中で初めて成り立っているわけです。超高齢化社会の中で、国の予算の公共投資への配分を変え、また、税金等の負担増というものを、ある程度、覚悟しなければならないと思います。介護を必要とする老人を、社会全体で支え合っていこうという視点が大切です。
3)介護保険のサービス内容
2000年から介護保険が導入されますが、その基本理念は
A)高齢者介護に対する社会的支援
B)高齢者自身による選択
 高齢者が自らの意思に基づいて、利用するサ−ビスを選択し、決定する。
C)総合的、一体的なサービスの提供
 予防やリハビリテ−ションを重視し、要介護状態にならないよう機能の維持に努めるということです。
具体的な内容としては
 平成12年4月から開始される介護保険で提供されるサービスの種類は、在宅サービスと施設サービスの2つに分かれます。
 在宅サービスは、ホームヘルプ、デイサービス、ショートステイの在宅3本柱のほかに、訪問看護、訪問リハビリ、痴呆性老人のグループホームや、福祉用具の貸与・購入費の支給や、手すり・段差解消の住宅改修費など12品目に、分かれています。
 要介護度に応じて給付の上限が設定され、利用料は、かかった費用の1割です。例えばデイサービスとホームヘルプで月20万円のサービスを受けたとすれば、利用料はその1割の2万円ということになります。
 施設サービスは、特別養護老人ホーム、老人保健施設、療養型病床群があります。費用の1割と食費が大体2万3000円程度に統一されます。

医療と介護サービスの選択が難しい
 介護保険が導入されれば、医療と介護がはっきり分けられます。また医療施設の種類が非常に増えます。病気の種類や時期によって、受ける医療と施設が異なることになります。医療が必要な患者さんは、手術や点滴などの医療サービスを受け、寝たきりや痴呆などで介護が必要な患者さんは、介護を受けることになります、今までの医療でしたら、病気になったら、なおるまで病院へ入院でき、そのあと自宅に帰ればよかったわけです。ところがこれからは、まずベット数の削減により、本当に重症で治療が必要な場合や、手術が必要な場合以外は、一般病院へは入院できなくなります。退院も非常に早くなります。退院後は、自宅から医院へ通うか、無理な場合は、看護婦さんや介護福祉士のかたと相談して、認定を受け患者さんの生活にあった、種々の介護サービスを受けることになります。医療スタッフや、役所や家族のかたと何度も相談しながら、選択していくことになります。自分の、病気の状態や、家族構成、生活形態にあった、いろんなサービスを選択しなければなりません。

終わりに
 ここ2−3年で医療が大きく変ります。良い改革もあり、問題のある改革案もあります。いろんな議論が起こっています。国民皆保険制度を維持して、収入に関係なく、平等で、安価な医療を受けられるようにすることが大切です。皆さんも注意して改革の方向を見極めてください。財政削減が優先される恐れが濃厚です。